時計には動作機構である「ムーブメント」が搭載されていますが、そのムーブメントにはいくつかの種類があります。 その中でも電池を動力とし、水晶振動を利用しているものをクォーツ式時計と言います。
水晶が電圧印加によって振動すると言う性質が19世紀後半にフランスの物理学者兄弟ジャック・キュリーとピエール・キュリーにより発見され、1921年に最初のクォーツ水晶振動子が開発される。それからクォーツ時計が開発されるまでは間も無く、世界で初めてのクォーツ時計は1927年にマリソンが発明した。
日本では1937年に古賀逸策が国産第一号のクォーツ時計を開発した。 従来の振り子やテンプの代わりに水晶振動子を用いる事で、より正確な振動数を時間の基準とする事が可能になったが、クォーツ時計が一般的に普及したのは、デジタル回路が安価に利用できる様になる1960年だった。
今でこそ安価で100円ショップでも手に入る様なクォーツ時計だが、世界初の市販クォーツ時計と言われる「SEIKO クォーツ アストロン35SQ」は当時45万円と中型乗用車並みの価格だったそうだ。
クォーツ式時計というのは水晶振動を利用していると前述したが、詳しく説明すると、水晶に電圧を加えると起きる振動を電気信号に変換し、さらにその信号を回転運動に変換し、歯車を動かしている。
クォーツ時計のムーブメントは水晶とICなどの回路の電子部品、歯車や竜頭などの機会部分、そして作動に必要なエネルギーを供給する電池からなっている。
水晶部分には真空のカプセルの中に、音叉の様な形状をした水晶が入っており、電圧を加えると1秒間に32,768回振動する。
水晶振動の様な波状の動きを周波数と呼び、1秒間に何回振動したかをHz(ヘルツ)という単位で表される。
クォーツ時計の周波数は32,768Hzとなる。
この振動を3つの回路で調整し、ステップモーターを動かす信号に変換する。
ステップモーター(ステッピングモーター)とは一定の角度づつ回転するモーターのことで、クォーツ時計の秒針をカチッカチッと動かしている部分になる。
クォーツ式時計は水晶振動を用いると説明しましたが、昔のゼンマイを用いたりする時計と比較した際のメリットやデメリットについて紹介したいと思います。
一般的なクォーツ時計の誤差は1ヶ月で20秒前後とかなり高精度なものとなっています。機械式時計などは1日に5秒前後するものもあり、1ヶ月100秒前後する事もあります。
また32,768Hzという高い周波数が高精度を実現する肝にもなります。
クォーツ時計に使用される水晶は衝撃や姿勢の変化に影響を受けにくい為、外的刺激による変質が少ないと言えます。
今では半導体デジタル回路が安価に生産できる技術が確率し、水晶の代わりにセラミックを用いる事もできる為、100円ショップなどでクォーツ式時計を買えるほどにコストパフォーマンスに優れています。
エネルギーとなる電池は消耗品であり、エネルギーがなくなると時計も止まってしまう為、電池を交換する必要があります。機械式時計の場合はゼンマイを巻き上げれば動き出すのですが、クォーツの場合は裏蓋を開け、電池を交換する作業が必要になります。
クォーツ式時計の構造上、IC回路を用いたり、小さな水晶を用いた非常に繊細な作りから、寿命は10年ほどと言われています。機械式時計の場合はオーバーホールやしっかりとした手入れが施されていれば数十年、50年近く動くとされています。